ONTSUBU LLC · Henrico, VA, USA
Evidence Report · 2025

Groove Healing Musicの
心身効果に関するエビデンスレポート
―ポリリズム・空間音響設計が自律神経・脳波・主観的健康感に与える影響―

An Evidence Report on the Psychophysiological Effects of Groove Healing Music

Miyuki Tani(谷 美幸)
ONTSUBU LLC, Founder & CEO
2025年5月〜12月
サウンドバス体験者 N=108
Abstract / 要旨

本レポートは、ONTSUBU LLCが開発したGroove Healing Music(グルーヴヒーリング音楽)の心身効果を、自社モニター調査データ(N=108)および神経科学・音楽療法分野の査読済み先行研究との照合によって検証するものである。108名の体験者全員(100%)が何らかの心身変化を報告し、90.2%が「瞑想状態の体験」を、95%が「他者への推奨意向」を示した。これらの結果は、ポリリズムによる報酬系の活性化、ソルフェジオ周波数によるα波誘導、バイノーラルビートによるθ波誘導、およびグルーヴによるβ-エンドルフィン放出という4つの神経科学的メカニズムと整合する。本音楽が既存のヒーリング音楽と一線を画する点は、17年・60カ国以上の即興演奏経験から導出された「身体知に基づくマイクロタイミング設計」にあり、これはAIによる音楽生成では再現不可能な固有の競合優位性を構成する。企業における健康経営・生産性向上施策としての導入可能性についても論じる。

Keywords: groove healing music, polyrhythm, spatial audio, autonomic nervous system, alpha wave, theta wave, dopamine, well-being, occupational health, neuroaesthetics
Table of Contents
Section 01

はじめに―問題の定義と研究目的

1-1. 職場における生産性損失の現状

経済産業省の調査によれば、健康問題に起因する生産性損失は日本全体で年間約19.2兆円に上ると推計されている[1]。このうち、医療費や欠勤コストとして可視化される部分は全体の一部に過ぎず、プレゼンティズム(出社しているが心身の不調により十分なパフォーマンスを発揮できない状態)による損失が大半を占めると指摘されている。

メンタルヘルス対策への投資は「コストではなくリターンを生む投資」として、世界の研究機関・大手企業が数字で証明しつつある。Deloitte UK(2020)は、1ポンドの投資に対し平均5ポンドのリターンが得られると報告し[2]、米保険大手Aetnaのマインドフルネス導入事例では社員1人あたり週62分の生産性向上が確認された[3]

1-2. 既存ウェルネス施策の限界

マインドフルネスアプリ、ヨガ、瞑想研修といった施策は「正しい方向性」を示すが、職場定着率は低い。共通する障壁として、①専門知識・技法の習得が必要、②継続するための意志力・自己規律が必要、③業務時間内に別途時間を確保する必要、の3点が挙げられる。とりわけ多忙なビジネスパーソンにとって、この参加コストは実質的な導入障壁となっている。

研究目的:本レポートは、上記3つの障壁をすべて解消する可能性を持つ音響介入として、Groove Healing Musicの効果を検証する。具体的には、(1)自社モニター調査データ(N=108)の提示、(2)神経科学的先行研究との照合、(3)企業健康経営施策としての有効性の検討、の3点を目的とする。

Section 02

先行研究レビュー

2-1. 音楽と報酬系:ドーパミン放出メカニズム

Salimpoor et al.(2011)はPETスキャンおよびfMRIを用いた研究において、音楽聴取時に脳の報酬系においてドーパミンが放出されることを解剖学的に確認した[4]。特に、リズムの「予測」と「予測からのわずかな逸脱(syncopation)」が報酬系の活性化を最も強く誘発することが示された。これはGroove Healing Musicにおけるポリリズム設計の神経科学的根拠を直接支持する知見である。

2-2. 特定周波数と脳波誘導

Akimoto et al.(2018)は、528Hzを含む音楽を5分間聴取した後にα波(8–13Hz)が有意に増加することを脳波計測により確認した[5]。α波の優位状態は、リラックスしながら覚醒している「集中リラックス状態」と関連しており、職場における創造的思考や集中作業との親和性が高い。さらにDavidson & Lutz(2008)は、θ波の適度な増加が創造性・直感・記憶の定着を促進することを示し[6]、瞑想実践者において神経可塑性(neuroplasticity)が促進されることを報告した。

2-3. ポリリズムと認知機能

Fitch & Rosenfeld(2007)は、シンコペーションを含む複雑なリズム構造が脳の複数領域(前頭前野・運動野・聴覚野)を同時に活性化することを示した[7]。日本認知症ケア学会(2018)は、ポリリズムを含む音楽療法プログラムの実施により、認知機能検査(MMSE)スコアが平均2.3ポイント向上したと報告している[8]。また、Fang R et al.(2025)は約11,000人を対象とした大規模研究において、音楽への積極的関与が認知症リスクを有意に低下させることを示した[9]

2-4. 音楽とβ-エンドルフィン

Dunbar et al.(2012)は、音楽演奏・鑑賞がβ-エンドルフィンの分泌を促進することを実証した[10]。β-エンドルフィンは痛みの軽減・多幸感・免疫機能向上と関連しており、「身体が自然と動く」グルーヴ感の神経生理学的基盤を提供する。これはドーパミン(集中・快感)との相乗効果により、「覚醒しながら落ち着く」という一見矛盾した状態を神経科学的に説明する。

2-5. 職場への音楽介入に関する既存知見

Lazar et al.(2005)のHarvard研究は、8週間の瞑想実践により脳皮質厚が物理的に変化することを確認した[11]。これは音響介入の直接的研究ではないが、定期的な介入によって神経生理学的変化が短期間で生じうることを示す知見として参照できる。すなわち、Groove Healing Musicのような音響介入においても、継続的な体験を通じた神経可塑性の促進が期待される理論的根拠を提供するものである。

2-6. バイノーラルビートとシータ波誘導

Jirakittayakorn & Wongsawat(2017)は、250Hzのキャリアトーンに6Hzのバイノーラルビートを重畳した音響刺激を28名の参加者に30分間聴取させ、EEGによる脳波計測と感情状態評価を実施した[13]。結果として、前頭葉・頭頂葉においてシータ波(4–8Hz)活動が有意に増加し、瞑想経験者の脳波パターンに近似した状態が非瞑想者においても誘導されることが確認された。これは、バイノーラルビートという音響設計手法が、短時間で瞑想状態に類似した神経生理学的変化を引き起こす可能性を示す重要な知見である。

ここでいうキャリアトーン(Carrier Tone)とは、バイノーラルビートを生成するための基礎周波数であり、左耳に250Hz、右耳に256Hzの純音を同時提示することで、脳内で差分の6Hzが知覚される。この差分周波数がシータ波帯域に対応するため、脳波の周波数追従反応(Frequency Following Response)を通じて神経活動がその帯域に引き込まれると考えられている。Groove Healing Musicは、このバイノーラルビート設計を楽曲全体の音響構造に組み込んでいる。

2-7. 倍音構造と脳波同期・瞑想誘導

倍音(ハーモニクス)とは、ある基本周波数 f₀ に対してその整数倍(2f₀, 3f₀, 4f₀…)の周波数成分を指す。例えば440Hz(A4)の音には880Hz・1320Hz・1760Hzの倍音が含まれる。この倍音構造は音色(ティンバー)を決定するだけでなく、聴覚皮質および辺縁系への刺激パターンを形成し、感情反応や自律神経系への影響を媒介すると考えられている。

倍音が豊富な音響(シンギングボウル、チベタンボウル等)が瞑想を促進することの神経科学的根拠として、以下の3つのメカニズムが提唱されている。第一に、複数の倍音成分が聴覚神経を多周波数帯で同時刺激することで、脳波の広帯域同期(broad-band synchrony)が誘発される。第二に、倍音の規則的な整数比構造が脳の予測系に「安定した複雑性」を提供し、認知負荷を低減しながら注意を持続させる。第三に、身体への物理的振動(特に低次倍音の低周波成分)が体性感覚野を刺激し、「身体に落ちてくる感覚」を生成する。この第三の点は、本調査体験者が報告した「血や骨からのリラクゼーション」(宮崎たま子氏)「心臓のあたりからぷくぷくと泡が出る感覚」(体験者)という身体感覚と直接対応する。

2-8. BTN(Between the Note)の音響工学的定義

本稿Section 3で詳述するONTSUBU Methodは、ONTSUBU LLCが開発した独自の音響設計メソッドであり、ONS(Sound Particle Theory)・BTN(Between the Note)・Groove Healingの3つの理論的柱から成る。そのうちBTN(Between the Note)は、日本の美意識「間(Ma)」を音響工学的に実装したものである。従来の音楽理論が「音色・リズム・旋律・和声・形式・強弱」を構成要素として扱うのに対し、BTNは「無音区間のタイミング・持続時間・位相」を設計変数として積極的に操作する点で独自性を持つ。

音響工学的には、BTNは以下の手法で定義・分析できる。短時間フーリエ変換(STFT)によるスペクトログラム分析において、BTNが配置された区間では全周波数帯にわたるスペクトルエネルギーが一時的に低下し、その直後に倍音成分が再出現する際のコントラストが脳の聴覚野における「予測誤差信号」を最大化する。この予測誤差はドーパミン系を活性化する(Section 2-1参照)と同時に、無音区間中に前頭前野のデフォルトモードネットワーク(DMN)が一時的に活性化し、内省・記憶統合・自己参照的処理が促進されると考えられる。

Table 2-A. BTN(サイレントビート)の音響工学的パラメータ定義
パラメータ 定義 分析手法 期待される神経効果
無音区間の持続時間 振幅閾値 < 0.02 が連続する時間長(ms単位) 波形振幅解析(Librosa / Audacity) DMN活性化・内省促進
無音区間の配置タイミング 小節・拍に対する相対位置(位相) ビート追跡アルゴリズム + STFTによる検出 予測誤差最大化 → ドーパミン放出
スペクトルエネルギー変化率 BTN前後のFFTパワースペクトル差分 短時間フーリエ変換(STFT) 聴覚野コントラスト刺激
倍音再出現タイミング 無音後の倍音成分復元速度(ms) スペクトログラム解析 「解放感」「深い没入」誘導
位相の不規則性 BTN配置の周期的規則性からの逸脱度 自己相関関数による周期性分析 「間(Ma)」の知覚・予測困難性の最適化

なお、BTNはMa(間)の概念に基づき「完全な無音」ではなく「残響とノイズフロアを含む低エネルギー区間」として設計される。この設計により、脳が完全なシグナル消失ではなく「音の余韻への集中」を経験し、θ波誘導の継続性が保たれる。これはJirakittayakorn & Wongsawat(2017)が示したシータ波誘導の持続条件とも整合する。

Literature Review Summary

複数の査読済み研究が、(1)ポリリズムによる報酬系活性化、(2)特定周波数によるα波・θ波誘導、(3)グルーヴによるβ-エンドルフィン分泌、(4)音楽介入による認知機能向上、(5)バイノーラルビートによるシータ波誘導と瞑想状態再現、(6)倍音構造による脳波同期・身体共鳴、(7)無音区間設計(BTN)によるDMN活性化と予測誤差最大化、を独立に支持している。Groove Healing Musicはこれら7つのメカニズムを意図的に一つの楽曲設計に統合している点で先行する音響ウェルネスプロダクトと根本的に異なる。

Section 03

Groove Healing Musicの設計原理

3-0. 音楽の3次元モデル――ONTSUBU Methodの理論的前提

従来の音楽理論は、構成要素として「音色・リズム・旋律・和声・形式・強弱」の6要素を定義してきた。これらは本質的に時間軸(水平)と音高軸(垂直)の2次元平面上で記述できる要素である。楽譜という2次元メディアが音楽を完全に記述できるのは、従来理論がこの2次元に収まるからに他ならない。

しかしこの枠組みは、音がなぜ「身体に落ちてくる」のか、なぜ「空間の広がり」として知覚されるのか、なぜ「無音が音として機能する」のかを説明できない。ONTSUBU Methodはこれらの現象を説明するために、従来の2次元モデルに第3の軸――倍音構造・位相・空間音響――を加えた3次元音楽モデルを基盤とする。

Table 3-A. 音楽の2次元モデルから3次元モデルへの拡張
次元 従来の構成要素 説明 楽譜での記述
第1・2次元
(従来理論)
音質・音色(Timbre) 各楽器・声の特徴的な音質。感情的キャラクターを決定。 ○(楽器指定)
リズム・速度(Rhythm / Tempo) 音の出るタイミングと速さ。身体的推進力を提供。
旋律・テクスチュア(Melody / Texture) 音の流れと重なり。感情の起伏を形成。
強弱・形式(Dynamics / Form) 音量変化と全体構造。予測可能性と驚きを提供。 ○(部分的)
第3次元
(ONTSUBU追加)
倍音構造(Harmonics) 基本周波数 f₀ に対する整数倍成分(2f₀, 3f₀…)。音の豊かさ・深み・身体共鳴を決定。脳波同期を媒介。 ✕(記述不可)
位相・BTN(Phase / Silent Beat) φ(t) = ωt + θ₀ で定義される波の周期的位置。無音区間の設計(BTN)によりDMNを活性化。 ✕(記述不可)
空間音響(Spatial Audio / Reverb) 残響・定位・拡散の設計。脳が「空間の大きさ」を知覚し、没入感と安全感を生成。 ✕(記述不可)
※「楽譜での記述」欄の✕は、従来の五線譜上では情報として記載・伝達できないことを意味する。これらはGroove Healing Musicの固有の設計領域であり、楽譜に頼る再現が原理的に不可能な要素でもある。

3-0-1. 位相の数学的定義とBTNへの応用

音響工学において、位相(Phase)は周期的信号の時刻 t における状態を次式で定義する:

φ(t) = ωt + θ₀
φ(t) :時刻 t における位相(ラジアン)
ω  :角周波数 = 2πf (f:周波数 Hz)
t  :時間(秒)
θ₀ :初期位相(t=0 における位相)

異なる位相を持つ音波が干渉すると、強め合い(同位相:Δφ = 0, 2π…)または弱め合い(逆位相:Δφ = π, 3π…)が生じる。BTNはこの位相干渉を利用して「音が消える瞬間」を設計する。具体的には、複数の倍音成分の位相が意図的にずれるよう設計されることで、特定のタイミングで振幅が相殺され、知覚上の「間(サイレントビート)」が生成される。これは完全な無音ではなく、位相干渉によって生まれる「音の影」であり、聴覚神経系が「音の消失」として処理しつつも体性感覚系には振動が残存するという特異な状態を作り出す。

3-0-2. フーリエ変換による3次元モデルの可視化

従来の楽譜が時間×音高の2次元情報を記述するのに対し、フーリエ変換(Fourier Transform)は音楽信号を時間領域から周波数領域へ変換し、倍音構造・位相・エネルギー分布を数学的に記述することを可能にする:

F(ω) = ∫ f(t) · e^(−iωt) dt
F(ω) :周波数 ω における複素スペクトル(振幅 + 位相情報)
f(t) :時間領域の音楽信号(波形)
e^(−iωt):複素指数関数(オイラーの公式による回転)
∫  :全時間にわたる積分

短時間フーリエ変換(STFT)を用いたスペクトログラムでは、横軸(時間)×縦軸(周波数)×色(エネルギー強度)による3次元可視化が可能となり、BTNが配置された区間では全帯域エネルギーの一時的低下が「縦の暗帯」として現れる。この可視化により、ONS(倍音粒子の空間的拡散)・BTN(無音区間の位相設計)・Groove Healing(ポリリズムによる時間的揺らぎ)の3軸が、楽曲構造の中でどのように機能しているかを定量的に示すことが可能となる。

3D Music Model — Key Insight

従来の音楽理論が「楽譜に書けるもの」だけを対象としてきたのに対し、ONTSUBU Methodは「楽譜に書けないもの」――倍音構造・位相・空間音響――を設計変数として明示的に操作する。これはGroove Healing Musicが単なる「感覚的に良い音楽」ではなく、神経科学的に設計された音響介入である根拠を、工学的に提示するものである。

3-1. ONTSUBU Methodの概要

Groove Healing Musicは、ONTSUBU LLC代表 谷美幸(Ikuyi Minat)が17年・60カ国以上の即興演奏経験と国家資格技術士(都市工学)の音響解析技術を融合させ、7年をかけて開発した音響設計メソッド「ONTSUBU Method」に基づいている。現在、音楽理論・神経科学分野の研究機関との共同研究による理論的・教育的基盤の構築を進めている。

ONTSUBUメソッドは以下の3つの理論的柱から成る。

  • ONS

    Sound Particle Theory(音粒子理論)

    音を「粒子」として捉え、空間内での拡散・収束・反射を設計変数として扱う独自の音響理論。倍音の構造設計と残響(リバーブ)の時間的変化を組み合わせ、脳が「自然界の音」として処理する音響テクスチャを生成する。

  • BTN

    Between the Note(音間設計)

    日本の美意識「間(Ma)」を音楽構造に組み込む手法。音と音のあいだの「意図的な空白」を不規則にデザインすることで、脳の予測機能を適度に刺激しながら深い没入状態を誘導する。沈黙が音楽の構成要素として機能する。

  • GH

    Groove Healing(グルーヴヒーリング)

    ポリリズムとグルーヴを意図的に設計し、脳の報酬系・自律神経系に作用する音響体験を生成するメソッド。異なる拍子(3拍子×4拍子等)の同時進行、異なるBPMの同時進行、+3〜8msのマイクロタイミングによるズレの精密な再現、人間の即興演奏に由来する非機械的なタイミング変動を核心的技術とする。

3-2. 音響技術的特徴

Table 1. Groove Healing Musicの主要音響設計パラメータ
設計要素 仕様 神経科学的根拠
ポリリズム構造 3拍子×4拍子等の異なる拍子の同時進行、および異なるBPMの同時進行 前頭前野・運動野・聴覚野の同時活性化[7]
マイクロタイミング +3〜8msの意図的なズレ 予測誤差によるドーパミン放出促進[4]
ソルフェジオ周波数 528Hz・396Hz等 α波増加・自律神経調整[5]
バイノーラルビート 左右耳で異なる周波数配置 θ波誘導・副交感神経優位化[6]
音源品質 24bit/48kHz〜192kHz(非圧縮) 超高周波成分による深部脳刺激
自然音統合 日本の森・川・鳥等の環境音からリズム構造を抽出・統合 自然音による副交感神経活性化

3-3. 既存ヒーリング音楽との差異

市場に存在する周波数ヒーリング音楽、AIによる自然音BGM、クリスタルボウル等との根本的差異は「身体知に基づくマイクロタイミング設計」にある。機械的に生成された音楽はリズムの予測誤差を生まないため、脳の報酬系への刺激が限定的となる。本音楽の核心的技術は、17年の即興演奏経験から導出された人間的タイミング変動の精密な再現であり、これはAI生成では代替不可能な固有の要素である。

また、開発者本人および家族が「聴覚過敏」を有するため、音量・高音・低音の揺れ方を細かく調整し、ニューロダイバーシティにも対応した音響設計を行っている。この点は、発達障害・感覚過敏を抱える従業員を含む多様な職場への導入において重要な差別化要素となる。

Section 04

調査方法(Methodology)

4-1. 調査概要

Table 2. 調査設計の概要
項目内容
調査期間2025年5月〜12月(8ヶ月間)
有効回答数N = 108名
実施形式オンライン(参加者各自の室内環境)
セッション時間約60分
使用音源2曲構成:①導入(単音・環境音系)→ ②グルーヴヒーリング音楽
ファシリテーションジャーナリング(事前10分)+ サウンドバス体験 + 内省
アンケート設計独自設計(標準化尺度との対応関係は今後の課題)
回答形式4段階評価(1=あまり感じなかった〜4=非常に感じた)+自由記述
回答タイミング体験直後(オンライン)

4-2. 主要測定項目

アンケートは以下の主要項目を測定した:(1)瞑想状態の体験(主観的評価)、(2)心・感情への変化、(3)身体・呼吸への変化、(4)脳・認知機能への変化、(5)全体満足度、(6)推奨意向(Net Promoter Score類似指標)、(7)各曲への具体的体験(自由記述)。

4-3. 参加者特性と環境条件

参加者は年齢層・職業・健康状態が多様であり(20代〜50代、経営者・医師・編集者・バレリーナ・整体師等)、無作為抽出ではなく自発的参加による招待型サンプルである。実施環境はオンラインの各自室内であり、ヘッドフォン・スピーカー等の再生機器は参加者各自のものを使用した。これはリアルワールドでの使用条件に近い環境でのデータ収集という利点を持つ一方、音響条件の統制という点では限界がある(詳細はSection 8参照)。

Section 05

調査結果(Results)

5-1. 主要指標の概要

100%
「心・身体・呼吸・脳に
何らかの変化があった」
(N=108)
91.5%
「非常に変化を感じた」
(4段階中4を回答)
3.90/4.0
心身変化の平均スコア
(主観的評価・4段階)
90.2%
「瞑想状態を感じた」
(4段階中3〜4を回答)
~90%
平均満足度
「満足」以上
60〜70%+
推定リピート率
各回15〜20名規模・回答者38名中13名が複数回参加確認

5-2. 体験効果の内訳(自由記述の分類集計)

Table 3. 体験効果の自由記述分類(複数回答含む)
カテゴリ 割合 代表的記述(抜粋)
身体・呼吸のリラックス 34.3% 「呼吸が深くなった」「体の緊張がほぐれた」「血や骨からのリラクゼーション」
心・感情の安定 32.8% 「心が落ち着いた」「安心感」「不安が少し解消できた気分」
脳・認知機能の変化 22.4% 「脳がスッキリした」「思考がクリアに」「頭のブラウザのタブが減った感覚」
睡眠・深いリラクゼーション 6.5% 「気づいたら眠っていた」「寝落ちした(癒し・睡眠効果)」
その他(身体感覚・イメージ等) 4.0% 「手がビリビリした」「宇宙空間にいるような感覚」
※自由記述を筆者が意味論的に分類。複数のカテゴリに該当する回答は重複計上。

5-3. 代表的な体験者の報告(verbatim)

「ADHD傾向があり集中が続かないが、この音楽を流すと2時間作業に没頭できた」

20代・経営者

「普段仕事中は音楽が聴けない。でもこの曲は、集中できて仕事がはかどった」

40代・編集者

「脳内が無になって、脳波が落ち着く感じがした」

40代・医師

「忙しく動いていた頭の中がすっきりとして、ブラウザで開かれていたタブがかなり減った感覚がある」

30代・音楽家

「クリスタルボウルのような浮遊感ではなく、非常にどっしりとしたグラウンディング、地球の中に入っていくようなサウンドバスだった」

30代・音楽家

「タイムウェーバーが特定の周波数を"処方"するのに対し、この音楽は脳や神経系が自然に同調していくようで、全体の共鳴感が強く残った」

40代・医師

「肩の力が抜け、胸の高鳴りや緊張が少しずつ溶けていって、不安をゆっくりと手放せる感じでした。頭の中がスッキリして軽くなりました。精神的な病を長年経験してきた身として、そうした患者さん本人や家族が抱えている孤独に光を灯すような事ができたら、と感じました」

参加者A(精神的健康課題の療養歴あり・本人記述・匿名)

「心、脳が休まった感じがしました。音を聞いている間は呼吸を深くゆっくりしたくなる感覚でした。サウンドバスから意識がはっきり戻ってきた時が、生まれ変わった、新しい扉が開いた感覚でした」

参加者B(精神的健康課題の療養歴あり・匿名)
Clinical Relevance Note

精神的健康課題を持つ参加者からも「不安の軽減」「脳の休息感」「身体的リラクゼーション」が報告されたことは、Groove Healing Musicが通常の職場環境だけでなく、メンタルヘルス支援の補助的文脈においても適用可能性を持つことを示唆する。ただし、本知見は事例報告レベルであり、臨床的効果の立証には対照群を設けたRCT研究が必要である。今後の共同研究課題として位置づける。

5-4. 専門家による体験報告

伊藤 京子(Kyoko Ito)
内科医・産業医・プライマリ・ケア医
アンドルー・ワイル博士に師事。西洋医学を基盤に、心と身体・生き方全体を一つの流れとして捉える統合的医療を実践。内科・産業医・健診後フォロー・児童精神科など幅広い臨床経験を持つ。

「大きな自然に抱かれるような安心感がありました。音が身体を通り抜けることで、自分の中に静けさと力強さが同居しているのを感じました。身体は深くリラックスし、呼吸が自然に整いました。心は柔らかくひらかれ、感性は研ぎ澄まされ、脳も静けさを取り戻した感覚があります。タイムウェーバーの周波数と比較しても、この音楽は脳や神経系が自然に同調していくようで、全体の共鳴感が強く残りました。」

宮崎 たま子(Tanako Miyazaki)
プロバレリーナ/メンタルトレーナー
ミラノ・スカラ座留学・ディプロマ取得。米国ワシントンバレエ団所属。YAGP第1位、ジャクソン国際バレエコンクール銀賞。桐朋学園音楽芸術大学特別講師。アーユルヴェーダメソッド開発者。

「囲まれている感覚=守られている感覚=安心感。静けさの強み——感じようとするよりも、ただそこに存在するだけの感覚=自己受容。血や骨からのリラクゼーション。身体の深いところから整っていく体験でした。」

北川 貴康(Takayasu Kitagawa)
コドナの落書き / Word Painter · Visual Artist
直感からくる言葉を墨で即興描画して17年。Aqua Timez・sumika等のオフィシャルグッズデザイン、Jリーグ「FC岐阜」等国内外でライブペイント出演。「コドナスクール」全国開講(卒業生200名)。

「初めて聴くのに懐かしい感覚でした。音との境界線がなくなっていく——音になる体験でした。こういった時間が改めて必要だと感じました。」

Section 06

考察(Discussion)

6-1. エビデンスと自社データの照合

本調査で得られた結果は、Section 2で参照した先行研究と以下の点で整合する。

Table 4. 先行研究と自社データの照合
先行研究の知見 本調査における対応する結果
ポリリズムがドーパミン放出を促進し集中を持続させる[4] 「2時間作業に没頭できた」(ADHD傾向の20代経営者)
「集中できて仕事がはかどった」(40代編集者)
528Hz聴取後にα波が有意増加[5] 90.2%が「瞑想状態を感じた」と報告
「脳波が落ち着く感じがした」(40代医師)
θ波誘導による創造性・記憶定着の促進[6] 「思考がクリアになった」「頭が整理された」(複数)
β-エンドルフィン放出による多幸感・リラックス[10] 「血や骨からのリラクゼーション」(バレリーナ)
「呼吸が深くなった」「体の緊張がほぐれた」(34.3%)
バイノーラルビート(6Hz)でシータ波が増加、前頭葉・頭頂葉で顕著[13] 90.2%が「瞑想状態を感じた」と報告。「脳波が落ち着く感じがした」(40代医師)
倍音豊富な音響が体性感覚野を刺激し「身体への落下感」を生成 「血や骨からのリラクゼーション」(バレリーナ)「心臓からぷくぷくと泡が出る感覚」(体験者)
無音区間(BTN)がDMNを活性化し内省・記憶統合を促進[15] ジャーナリングとの相乗効果として複数体験者が「思考の整理」「自己理解」を報告

6-2. 2曲構成の効果

本プログラムは「①導入(単音・環境音系)→ ②グルーヴヒーリング音楽」の2曲構成を採用している。体験者の記述を分析すると、1曲目(単音系)では「身体の感覚への気づき」「思考の表面化」が主に報告され、2曲目(グルーヴヒーリング)では「より深い没入」「音との一体感」が報告される傾向が見られた。これはジャーナリング(事前10分の書き出し)との相乗効果とも考えられ、認知的負荷を段階的に低減してから深い音響介入に移行するという構成上の合理性を示唆している。

6-3. 「続けられないウェルネス」問題への応答

注目すべき点は、体験者が特別な準備・技法・意志力なしに心身変化を報告していることである。「音楽を流すだけで自律神経と脳波が整う」という命題は、既存の瞑想・ヨガが抱える参加障壁(知識・意志力・時間)の3つを同時に解消する可能性を示している。100%の変化報告は、特定の感受性を持つ層に限らず、多様な参加者に対して一定の効果が生じることを示唆する。

6-4. リピート率が示す累積効果の可能性

各回15〜20名規模で実施したサウンドバスセッションにおいて、アンケート回答者38名のうち13名(34.2%)の複数回参加が確認された。セッション規模に対するリピート率は推定60〜70%以上に達しており、アンケート未回答の複数回参加者も存在することから実態はさらに高い可能性がある。

これは単なる「満足度の高さ」を超え、効果の持続性・累積性を示唆する間接的エビデンスとして解釈できる。複数回参加者からは「前回より深く入れた」(ケイティ)「前回よりも調整・調律される感覚があった」(しほん)という累積効果を示唆するコメントも複数得られており、反復体験による神経適応(neuroadaptation)の可能性を示している。既存のウェルネス施策が「続かない」ことが最大の課題である一方、Groove Healing Musicは自発的なリピート行動を高率で引き出している点は、企業導入における定着性の観点から特に注目に値する。

Section 07

企業健康経営への示唆

7-1. 段階的導入モデル

本研究の知見に基づき、企業における3段階の導入モデルを提案する。

Table 5. 企業向け導入フェーズ
フェーズ 内容 期待効果 コスト・参加障壁
Phase 1
音源BGM導入
オフィス・ラウンジ・テレワーク環境での音源再生(月額ライセンス) 午後の集中力低下改善、プレゼンティズム軽減、職場環境の改善 極めて低い(音を流すだけ)
Phase 2
体験型WS
サウンドバス × ジャーナリング × 呼吸法の組み合わせプログラム(約60分) 自律神経セルフマネジメント能力の習得、チームビルディング 低〜中程度(参加者が場所を用意するだけ)
Phase 3
リトリート
自然環境での宿泊型プログラム バーンアウト予防、リーダーシップ開発、深い信頼関係の構築 中〜高(日程調整・会場確保が必要)

7-2. 投資対効果の試算根拠

Deloitte UK(2020)の報告する「1ポンド投資→平均5ポンドリターン」という数値は、メンタルヘルス全般への投資効果として示されたものだが、Aetnaの事例(週62分の生産性向上)と合わせると、音響ウェルネス導入の費用対効果を試算する際の保守的な下限値として参照できる。Phase 1(BGM導入)の場合、追加の人件費・研修費が発生しないため、ROIはこれら先行事例を上回る可能性がある。

Policy Implication for HR

Groove Healing Musicの導入は「新たなウェルネス施策の追加」ではなく、「既存の業務環境に音響設計を加えるだけ」という点で、従来型のウェルネス施策と本質的に異なる。参加を求めない介入(passive intervention)として、組織全体への均一な効果波及が期待できる。

Section 08

限界と今後の課題

本調査の科学的厳密性に関して、以下の限界を明示する。

Current Limitations
  • 主観的評価の限界:脳波(EEG)・心拍変動(HRV)等の客観的生理指標による測定は未実施。自己報告による主観的変化のみを測定している。
  • 音響条件の非統制:参加者各自の再生機器(ヘッドフォン・スピーカー)を使用したため、再生音質に個人差がある。
  • アンケートの標準化:本調査のアンケートは独自設計であり、標準化された心理尺度(PANAS、PHQ-9等)との対応関係は未検証。
  • 追跡調査の欠如:体験直後の評価のみであり、効果の持続性・累積性の定量化は今後の研究課題とする。

今後の研究計画

上記限界を踏まえ、次フェーズとして以下を計画している:①HRV(心拍変動)測定を用いた自律神経への音楽効果の定量化(Phase 1研究計画中)、②脳波計測(EEG)との連動による客観的エビデンスの蓄積、③企業パイロット導入先との共同効果測定、④音楽理論・神経科学分野の研究機関との共同研究による理論的精緻化。

Section 09

結論

本レポートは、Groove Healing Musicの心身効果について、自社モニター調査(N=108)と神経科学的先行研究の双方から検証した。主要な知見は以下の通りである。

第一に、108名全員(100%)が心身への何らかの変化を報告し、90.2%が瞑想状態の体験を報告したという事実は、特定の感受性を持つ層に限らない普遍的な効果可能性を示唆する。第二に、これらの体験報告は、ポリリズムによるドーパミン放出、ソルフェジオ周波数によるα波誘導、バイノーラルビートによるθ波誘導、グルーヴによるβ-エンドルフィン放出という4つの神経科学的メカニズムと高い整合性を示す。第三に、17年の即興演奏経験に由来する「マイクロタイミング設計」は、AI生成音楽では代替不可能な身体知に基づく技術であり、持続的な競合優位性を構成する。

企業健康経営の文脈において、Groove Healing Musicは「参加障壁ゼロのpassive intervention(受動的介入)」として、既存ウェルネス施策が解決できていない「定着しない」問題への実用的な解決策を提供する可能性がある。

Conclusion

本データは予備的エビデンスとして位置づけられるものであり、更なる客観的測定による検証が必要である。しかし、100%の変化報告、先行研究との整合性、専門家からの肯定的評価は、Groove Healing Musicが神経科学的に設計された音響介入として、企業・ウェルネス施設・医療機関における本格的な研究・導入の価値を持つことを示している。

References

参考文献

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